「積ん読」の語誌

http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20081228
こちらにありますように、

に、「「積ん読」の語誌」を寄稿いたしました。56-57頁。

「「積ん読」の語源」ということで、お話を頂いたのですが、どのような人が使ったのか、というような話も、ということでしたので、「語誌」にしていただきました。二頁で「語誌」を名乗るのは、少し誇大広告ぎみですが。


「はじめに」を見ますと、

何気なく使っている「積ん読」という言葉について、国語学の研究者に解説してもらった。

とあり、「ておく」の意味変化であるとか文法かであるとかについて全く、「ておく」から「とく」への変化であるとかについても、あまり書いていないことを、申し訳なく思います。


後になって、「積ん読」の語が、『ことばのくずかご』などにも引かれるような明治のころのものではなく、江戸期に遡ると言うことは、本が積むものであった頃からあるということにも触れた方がよかったようにも思いました。つまり、和本は立てて並べるものではなく、積んで置くものだったということです。


ただ、この『山からお宝』は、本棚からあふれ出て並べられずに、積まざるを得ない、という思いが集められているものなので、やはり書かないでよかったか、とも思っています。


なお、私は、本棚に、洋裝本も、積んでおります。「積ん読フレンズ」の名に恥じないところです。


売店リストなど、入手方法についてはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20090106


完売の情報が得られるまでは、私の文章も、公開はしません。

載せなかった用例から

反町茂雄蒐書家・業界・業界人』八木書店 p.114

蒐書家に対する世間の悪口に、「ツンドク先生」というのがあります。小汀さんは「シマットク家」だった様に思います。おなくなりになる前後に、私は書庫に入って、その隅々までを点検し、重なもの全部のカードをとりました。書物はドレも全部大切に仕舞われてあって、箱入のもの以外は、一点ずつを殆ど残らず新聞紙に包んで、ソッと紐でくくってありました。こんなやり方は初見です。新聞紙は紙魚を防ぐ効果のある事を、よく知って居られたのでしょうね。

オバマさん、小汀利得のことです。


柳田国男「赤頭巾の歌仙」著作集26

積んで置くは妙な言ひ方だが、古いだじゃれのツンドク主義などが、うっかり此場へ顔を出したのであらう。

「もらった本を先づ積んで置く」という句への注。


千葉亀雄新聞語辞典

つんどく(積ん讀) 種々な本を買ひ込んでは、積み重ねて置くばかりで一向に披いて讀んでみようともしないことをいふ。

http://uwazura.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_a97f.html

精読通読も一読もしない怠慢な読書を、「つんどく」という。「積ん読」と書くが、本を買ってきて机の上にただ「積んでおく」だけという意味だ。「積んでおく」の「で」の母音eが落ちて、deoの部分がdoとなった縮約形である。

載せたものですが長目に

丸善のガクトーによくツンドク先生が何かを書いてゐる。ツンドク先生は讀みもしないで、本を飾り立てゝ置く似而非學者のことであるさうだが、私は好きな本を讀まないでも目の前に並べておいて眺めると、好い氣持になるので、敢てツンドク先生になつてゐる。いつか讀む本だけを數册机の上に置くやうにしたことがあるが、何となくさびしくて、あたまが段々惡くなつたので、またツンドク先生を初めたことがある。
西村真次随筆多角鏡』「讀書と著書」p357

http://uwazura.cocolog-nifty.com/blog/2005/11/post_57b4.html


新村出書物識語」『典籍雑考抄』全集9

魯庵の言ひはじめた文句かと思ふが、ツンドク先生といふ警句がある。私の場合もその所謂ツンドク主義に外ならないが、書物といふものは、妙なもので、どんなにつまらぬものにしても、或る場合には全く用のない役にたゝぬものと認めたにしても、若し所蔵者の研究心や趣味性の推移と、専門の拡大や詮索の精緻やの趨勢とによつては、後日意外の感を以つて、往時一顧しなかつた書物を珍重がる時節の到来を迎へることがあるものである。むろんその読書家の専門や学風にもよりけりであつて、一概には云へないけれども、場所の許す限り、書物は手離さずにツンドクのはともかく、オイトクことにするがよいのである。


書物語辞典

つんどく(積讀)本を買つて積んどく。どくと讀の同音から讀まずに積んでおくことをしやれたもので和田垣謙三博士の造語

ほかに

米川明彦日本俗語大辞典ISBN:4490106386
でも、用例がいくつか拾えます。

古例

江戸時代にまでさかのぼる、というものです。